うつ病の症状と治療
うつ病では、もともとストレス障害と異なり発病の原因となるようなものはないので、結局行きつくところは自分の問題となり自分を責めることが多いものです。
うつ病の病因については、現在、なお研究が進められていますが、残念ながら解明には至っていません。
精神科医療の治療場面では、うつ病は代表的な疾患の一つです。うつ病の患者さんの治療に当たって実感することはうつという「波」です。静かだった海面に白波が立ち始め、それが徐々に大きなうねりとなって押し寄せてくる。
その間患者さんはまったく無防備でその波に立ち向かって行き、ある者は途中で倒れ込み、ある者はなんとかその波が引き上げるまで持ちこたえる。うつ病では病気の期間のことを病相(Phase)と言います。つまり初めと終わりがある病気なのです。その持続期間は3-6カ月くらいの事が多いようです。
しかしうつ病は一生のうちに何度か反復する可能性のある病気といえます。うつ病の症状と特徴をまとめると次のようになります。
欲動の障害
欲動とは人間が生きていく上で欠かすことのできない欲求行動であり、性欲、食欲、睡眠欲、運動欲、生命欲の5つがあります。これらの欲求は人間の本能に近いものですから、自己コントロールの効き難いものです。
性欲は概ね減退します。食欲も低下するのが一般的ですが、時には逆に過食、あるいは偏食など、食行動の異常が見られることもあります。不眠、中途覚醒、浅眠、起床困難等の睡眠障害はうつ病の前駆症状として、また病期を通して認められ、うつ病患者が抱く苦しみの一大要因の一つに挙げられます。
「体を動かしたい」という欲求は運動欲と呼ばれています。この障害は「疲れやすさ」「横になっているのが一番楽」「何もしたくない」という形で現れます。健康な人であれば、適度な運動は心地よいものですが、うつ病患者では苦痛に感じることは少なくありません。
抑制症状
うつ病の特徴は「動機のない悲哀感と主として思考、行動の制止」と言われています。この悲哀感にはしばしば不安が伴います。「制止」とは興奮の逆でブレーキのかかった状態を指しますが、これは思考、行動はもちろん、意志、表情、表現、肉体機能等人の精神、身体活動のすべてに影響を及ぼします。
(判断力の低下、優先順位がつけられない、同じことばかり考えるなど)
2.筋肉の抑制
(表情筋のゆるみ(表情が乏しい)、緩慢な動作、疲労感、脱力感、声が小さいなど)
3.胃腸の抑制
(食欲低下、便秘、口渇など)
思考様式・判断力の変化
出勤してもまったく仕事になっていない現状は把握でき、もし部下が自分と同じような状態であれば休ませると判断できるにもかかわらず、出勤にこだわる場合もあります。
こうした歪んだ思考、妙に頑なな思考様式、相矛盾する思考はうつ病ではしばしば見られます。うつ病に見られるこうした思考の歪みが極端になると、妄想に発展することもあります。
リズムの障害
1.病相としての波
うつ病は「波」に喩えられます。波は基本的には一相性で波形曲線をとります。つまりうつ病相に突入すると、徐々に病状は進行し、ピークを迎えた後、軽快に向かうというものです。
ストレス障害では、その発症が急激である場合が大半ですが、うつ病の症状出現はいろいろな症状がジワリと押し寄せる波の形をとっているため、症状の出現は比較的緩やかに出現することが多いものです。
2.季節変動・日内変動
うつ病患者の中には、毎年のように春先になるとうつの波を反復するといったように、季節との相関が認められる人がいます。一方、うつ病では1日24時間の内に比較的規則性を持った病状の動揺があることはうつ病の「日内変動」として古くから知られているところです。午前中抑制が強く、午後から夜間にかけて軽減することが一般的です。体内時計のずれが生じその結果、床離れが悪く、午前中はどんよりとした気分で、徐々に夕刻から活動性が増してきます。
うつ病の治療
うつ病の治療は基本的に次の2点です。2.抗うつ薬による薬物療法
本来のうつの波が持ち上げられうつ病相の期間は短縮され症状の強さも軽減されます。もし効用が感じられない場合には別の抗うつ薬を使用すべきです。
薬物療法で効果が期待できる確率は70-80%くらいだと思います。
薬物療法に効果のないケースの場合には光照射療法、食事療法、認知行動療法、電気痙攣療法などが試みられるべきです。
うつ病の兆候
うつ病は自分ではなかなか気がつかないことが多いものです。しかし、周囲の人が見るとその異変「こころの病気」に気づく事が少なくありません。
自分で気づけるうつ病の兆候
・体重が減った・人に会いたくない
・趣味から遠ざかっている
・何につけても自信がない
・仕事の能率が上がらない
・仕事をしたくない
・朝刊を読めない
・朝の通勤がつらい
・比較的夜は、仕事が進む
・いらいらして人に当たる
・自分のせいで業務が進まない
・テレビが面白くない
・体の色んなところの調子が悪い
・性欲がない
・酒の量が増えた(減った)
周囲が気づくうつ病の兆候
・表情が暗い・いらいらと、おこりっぽくなった
・口数が少なくなった
・涙もろくなった
・笑わなくなった
・自分の失敗をひどく気にする
・顔色が悪い
・ため息が多い
・反応が鈍い
・落ち着きがない
・仕事の能率が悪い
気づきにくいうつ病の兆候
・体の不調・怒りっぽくなる
・酒量が増える
・転職や退職を考える
・風邪がなかなかよくならない
・些細なミスが連続する
隠すことが難しいうつ病の兆候
・不眠 (睡眠障害)・性欲減退
・食欲不振
・起床不良
・疲労
・判断がつかない